Rymes With Orange「Trapped In The Machine」(1994)
カナダ・バンクーバー出身のオルタナティブロックバンドがリリースした、通算2作目でありメジャーデビューとなるアルバム。A&M Recordsより1994年。
彼らは自身で立ち上げたレーベルからのファーストアルバム『Peel』を含め、計4作リリースしているのだが、確認できる範囲ではこのアルバムのみアポロンから日本盤CDがリリースされている。ライナーノーツによるとシングルカットは1曲目の『Toy Train』と5曲目の『She Forgot To Laugh』の2曲で、どちらもカナダ国内のナショナルチャートでトップ10に入ったそうだ。
サウンドはわりとアメリカ的なダイナミックさがあるオルタナロックで、一聴した印象だとSmashing Pumpkinsに近しいものを感じる。ガリガリしたギターの音がカッコよく、それを支えるグルーヴィーなリズム体も心地よい。このバンド名に変更する前も数年間地道に活動していたらしいというのもあって、演奏の安定感は抜群だ。メロディーも、微かに青さの残ったアメリカンロックらしい質感でとても様になっている。
ただこのバンド、シングルカットされた曲『She Forgot To Laugh』のタイトルを見れば容易に想像がつくと思われるが、爽やかな歌メロにたいして歌詞の内容が重い。それも数曲ではなく、全編通してこういったスタンスなのだ。恋愛的な曲も多分に含まれているが、タイトルトラックの『Trapped In The Machine』のように社会的なメッセージが強く込められたものもある。
Man's ship that he's been sailing has run aground(人類を乗せ航海してきた船は座礁してしまった)
The earth stopped breathing(地球は呼吸を止めた)
We're trapped in the machine(我々は機械に捕らわれている)
(※ライナーノーツより引用)
と叫ぶこの曲は、現代社会で機械に頼り切っている我々にも強く響くメッセージである。
イチオシ曲は『I Believe』だ。物憂げなギターの掛け合いから、ガツンと入り込んでくる強烈なビートが最高にカッコいい。抑圧された衝動が渦巻くような熱気を孕んだ名曲である。サビの部分でのヘヴィーさが一級品で、うっすらと聴こえるアコースティックギターやオルガンの音もいい味を出している。
彼らのアルバムは4枚ともにサブスクで聴くことができるので、このアルバムが気に入った方はぜひ他作品も。
P.S.
このバンドを調べている途中に、名義変更前に参加経験のあるJJ GilmourからThe Silencersなるバンドと出会った。こちらはスコットランドのバンドなのだが、ここのつながりができるというのがなかなかに面白い。